職人とブタ/オダ カズヒコ
 







湾岸を行く高速道路を 車で5時間くらい走っていた
後部座席ではブタが眠っている

100円ショップで買ったブタだが
カフェオレもトーストも 毎朝きちんと食べるし
寝巻きと着替えの服と 歯ブラシを
いつもリュックサックに入れている

海峡を横断するあたりで彼のケータイに着信があり
ちゃんとブタには彼女だっているのだ

しかしブタには帰るところがない

サービスエリアで トイレの脇にあるゴミ箱に
ブタを右手で深くつかんで 投げ捨てようとしたが
丸顔のくせにけっこうヤツは 恐ろしい目をして

「俺をそのゴミ箱に投げ捨てるのはいいが
 それに
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