河を渉る/たま
 
河の向こうにあるのは
向こう岸です
至極当然だけど、事実です
あなたは今、どちらの岸辺で詩を書いていますか
向こうですか
こちらですか
それとも、どちらだかわからないですか
一生懸命に書いているのに
あなたの詩が評価されないとしたら
それは何故ですか
河を渉っていますか
ひょっとして
あなたは目の前の河の存在に気づいていないのかもしれません
河は事実としてそこにあるのです
渉りなさい
河を渉って向こう岸で詩を書きなさい
こちらで書いてはいけません
何故かというと、こちらには読者がいないからです
さあ、河を渉りなさい
思案してはいけません
とても浅い河です
歩いて渉りなさい
あなたの足と、あなたの言葉と
そして
八月六日のあの人たちの絶望を抱きしめて
今すぐに
河を渉りなさい
















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