嘘つきの星のもとに/まーつん
 
 ある少年がいた

 何処かに
 旅に出たくても

 そう簡単には
 身動きのならない
 身の上で

 金もないし
 健やかでもないし
 勇気もないし
 運もない

 ないないづくしで

 だから、彼は
 ベッドの上で詩を書いたり
 物問いたげな飼い猫に
 何かを物語ろうと
 試みていた

 彼が
 鳥になれるのは
 多分、言葉の世界だけ

 彼が
 英雄になれるのも
 多分、言葉の世界だけ

 彼が、裸で
 旅にたてるのは
 多分、言葉の世界だけだった

 それを
 嘘つきというのなら
 なるほど彼は、嘘つきだ


 
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