ルーシ、5月に生まれた女/ピッピ
 
いるんだ
ルーシ
君の小さな掌が
僕の人差し指を包み込んだ時
僕にはアルプスとロッキーが同時に見えた
蜉蝣という小さな虫が
5月の世界を作り出したように
あの時
僕は天才になったんだ
ルーシ
君は一人だ
ルーシ
君は一生
自分の中に血が流れているのを
知らなくていい
他人に流れる血を見て
自分が生きていると分かればいい
わかるというのは
いつだってそういうことさ
ルーシ
古びたベッドの上に
眼鏡があったろう
それが僕だ
君には僕なんて
既になんの意味もないものさ
安全靴で踏んづけて
フェスティバルへ行っておいで
君には目に映るものを
全て壊したって構いやしないよ
ルーシ
君の名は
君よりも素敵だ
どうか君が
その名前を決して口に出さぬよう
ルーシ
ルーシ
ああルーシ!
一番明るいあの星に
名前なんていらなかっただろう
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