zenith/高原漣
 

「いつも死神と鬼ごっこだったさあ」

赤い星の男『さそり』はそう言って銅色の髭をなでて笑った

極から流星の雨が降る夜だ

魔法にかかったような音楽、特にフルートの音色が

高く低く、遠く近く、詩神のささやきのように

酒場の空気をふるわせていた

さそりは紅玉の義眼が嵌った右目を眇め「あンたぁ見たことないだろうがよ」

筋肉で膨れた腕が口元にラム酒を運ぶ

「燃える宇宙船、星の潰れッちまう瞬間とか」

嚥下する音

「……そういうもんをいっぱい見たなぁ。主砲が反陽子をぶっぱなすのさ」

稲光のような武器が真っ黒い空間を断ち切ってゆく姿を思い出す

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