彼の世界/Giton
 
賛するかのようにふるまい、一片の土地さえ囲い込まないふりをしながら私腹を肥やした。
かれらの神は、遥かな楼閣の高窓に、見えないほど小さな人の姿をして現れ、両腕を差し伸べる形を現し、黄色く輝き、そして消えてしまう。それが、かれらの神が行なう奇蹟の全てだ。

その場所を通り過ぎてゆく異邦の楽隊。色あせた旗幟をなびかせ、葦笛を吹き、聞きなれぬ拍子の鼓を響かせる。
渓筋に沿って消えてゆくその異形の列だけが、この場所から脱出させてくれるかもしれないか細い唯一の導きと思われたのだった。
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