風の彫刻/まーつん
 
 風は、
 未熟な理想が描かれた
 カンバスを引き裂き
 手つかずの石膏に、牙を剥く

 風の軌跡は、石の周りで
 脱水機の様に渦を巻く
 無垢の塊を切り刻む
 荒々しい抱擁

 そうして
 彫り上げるのは
 君や、私の姿をした

 幾つかの彫像

 狭いアトリエは
 白い粉で視界が曇り
 静けさと重力が、時間をかけて
 澄んだ空気を取り戻す

 その時
 私たちの前に
 立ち現われる立像は

 苦悶に身を
 曲げているだろうか?

 歓喜に両腕を
 広げているだろうか?

 時代の風に
 削り出された

 私たちの
 心の姿


戻る   Point(8)