風の彫刻/まーつん
風は、
未熟な理想が描かれた
カンバスを引き裂き
手つかずの石膏に、牙を剥く
風の軌跡は、石の周りで
脱水機の様に渦を巻く
無垢の塊を切り刻む
荒々しい抱擁
そうして
彫り上げるのは
君や、私の姿をした
幾つかの彫像
狭いアトリエは
白い粉で視界が曇り
静けさと重力が、時間をかけて
澄んだ空気を取り戻す
その時
私たちの前に
立ち現われる立像は
苦悶に身を
曲げているだろうか?
歓喜に両腕を
広げているだろうか?
時代の風に
削り出された
私たちの
心の姿
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