奏でるよりも聞き惚れて/千波 一也
銀河のほとりには
ため息たちが花開いて
湖面は
ゆらめく
つかの間の風のなかに
つかの間の風のそとに
言葉の実る予感、が
色づいて
瞳の奥を波が走る
こころ有る者はいつも孤独で
秘めた祈りが降り積もる
ほころぶすべがあるとすれば
それは、風
届きたくても
届くことのない
やわらかで圧倒的な矛盾
まるで
鏡の世界のように
すべてが正しく
すべてがいつわり
多くを備えない非力さゆえに
だれもがしずく
ささやかに
円をなす
一滴の
瞬く星は
互いの遠さに
あこがれ煌めいている
奏でるよりも聞き惚れて
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