おとぎ話/猫の耳
、
覚えてない振りをした。
だって…
私が思い出す振りをして首を傾げていると、
あなたは周りを見回してから、
私を抱きすくめキスをした。
それは、
あの時と同じだったけれど、
あの時と同じじゃなかった。
わかっているけれど、
何だか哀しかった。
あなたはふいに立ち上がると、
もう帰らないと…と呟いた。
私も立ち上がり、何事もないようにスカートを払った。
私達は大人になっていた。
ね、通り過ぎた年月って残酷?
それとも優しいのかな?
答えは出ないけれど、
約束もしないままに
私達は別々の道を帰っていく。
道すがら、思い出した。
おとぎ話に続きはなかったんだよね。
もう日が暮れる。
紺色の闇が静かに私の心を覆った。
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