おとぎ話/猫の耳
 
夏の夕方の空気はひどく湿っていて、
身体にまとわりつくように重い。
何故だか涙がでる。
私が言うと、あなたはそっと微笑んだ。
それはね、
風が街を巡り、みんなの悲しみを絡め取り、
そのまま海へ流れていくからだよ。

そんなおとぎ話のような話を、
あなたは囁くように話してくれた。
夕日に包まれたお寺の階段、一番上に、
ふたり並んで座りながら。

そう…あれは高校一年の夏の終わりだったね。
偶然の再会が二人の記憶を巻き戻す。

それから…
それから私達どうしたんだっけ?
私が聞くと、あなたは憮然とした。
なんだ…覚えてないのか。

もちろん覚えていたけれど、
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