花火の夜/AB(なかほど)
 
にたり顔で
坂道
のぼるとお稲荷さん

帰りたい

帰れない

僕の場所でない場所に
帰りたい

もう帰れない


気がつくと
宿にたどりついてしまった
月の夜

故意に忘れ物をしていこう
と決めた夜

月の夜


帰る}





江戸川(花火の夜)


猫が逃げました
ボヤが出ました
便所は汚すな

親切な貼り紙のアパートの
隣の部屋の人の顔 
まだ見たことありません

のような午後の世界に

河川敷の花火
の音が聞こえる
暮れない夜に


君が百本の小説を乗り越え眠るころ
僕は一握の詩の前で童貞のままで
国際色の喧騒にしがみつきながらも
同じ月の夢に 

ニャー
   と哭く



  





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