ひとつ 辿夜/木立 悟
 
わりつづける雨が照らす
目のなかに眠るもうひとつの目
花の名前
色の名前を夢みている


  「雷さえ訪ねてこない」
  また声がして
  今度はそちらを向くことができた
  そこには見慣れたものの背が
  にじむようにたたずんでいた


断崖を逡巡するすべての足跡から
むらさきの芽が噴き出している
此処に咲く花は無く
ただ消えてゆくたましいを
見つめるだけのたましいが揺れる


雨 光 音 径
花 声 色 芽
何をどのように辿っても
どうしても行き着く崖の上で
手のひらは夜をかき混ぜている






















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