蠍の火/dopp
うち泣き出して、倒れた自殺者の側にあった石を手に取り顔を叩き潰しだした。僕としても焦る他なかった。顔を潰して欲しいとは言わなかったはずだ。「やめなよ。」僕は言った。「こいつは。」彼女は言った。「名前をつけてたんだ。私は。全部。こいつの中に生きてる菌や虫に。最近ジョニーの所じゃ子供が生まれたばかりなんだ。それをこいつは。殺してやる。殺してやる。」彼女が石を振り下ろす度に彼の顔面は跡形もなく崩れ、そして顔の表面に住んでいた小さい者たちは行き場を失ってしまった。彼らに生を奪われるはずだった更に小さい者たちは命を得ることになった。
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