丘の恐竜/乾 加津也
 
いるわけがない
いつもの夕飯時のはずが
食卓に投げ出される、突拍子もない弟の主張
あの丘で恐竜を見た
家族みんなの一笑、からかいに
きみはひとり意地を張りつづける

 うっすらとほの暗く
 でこぼこ丘は、ひとの入らない繁みで覆われ
 だれかが、通学に近道で小路がとおり
 不審な人が出てはあたりに柵と注意書き
 ゴルフ練習場のために半分が切り崩されて駐車場

そして今やきれいさっぱり
面影もない


あの丘の恐竜は
もう散り散りの、ひととき馬鹿げた家族の
証明(かけら)となって眠りつづける

戻る   Point(12)