森山恵詩集『みどりの領分』について/葉leaf
「だれも知らない何かが」生まれ出る場が設定されたのではないだろうか。作品は誰の目に触れるか分からない。だが、森山の作品を読んだ人間は、自分の「目の色」、つまり認識の様式が変化したことに気付くのではないだろうか。それは、読者自らが自然の深淵、自己の深淵へと降りていくきっかけとなるものであり、その深淵において絡み合っているすべてを持続させる「愛」の原理を見つけるきっかけとなるものである。森山はその場を設定した。だが読者はその場へ降りていったからと言ってどのように変化するかはわからない。ある者は何の変化も受けないかもしれない。別の者はただ自然描写が美しいと感じるかもしれない。注意深い者は根底にある「愛」の原理に気付くかもしれない。だが、それらを超えて、筆者の解釈をさらに凌駕するような形で、それこそ「だれも知らない何か」を生み出していく優れた読者もいるかもしれない。そのような得体の知れなさを孕んでいるのが、自然と人間の根底にある「愛」の原理の持続力ではないだろうか。
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