レモン葬/こしごえ
ったほの暗い空間の地面に
引力で結ばれた無数の気泡を宿らせて
青緑色に透けている
ビー玉が忘れ去られ
ほんのすこし光っている。
塀のむこうがわにレモンの青い葉が見える
いずれ雲は
自然へ帰る
亡骸の
火葬された煙をふくみふくらみつづけ
肌をたたくおおつぶの雨となり
雨水は雲影におおわれた庭の土にしみこむ
その時独りの影も
庭で椅子に座ったままさびしげに目をふせてぬれた
宿無しの風はふりむかずに灰色の椅子と
それに座っている肌をなぜていき
風鈴の音がひびくなか雨が上がる
空にのこった雲はゆったりとつぎつぎに流れてゆき
洗われて 清んだ空は笑みを零す
零された光は雲間にみちあふれて
失われつづけた いのりは重くよみがえる
秋も深まるころ
独りの影といっしょに
時を見つめる静かなものは
やわらかな日があたる縁側に座り
庭の まだ青い葉をながめてから果物ナイフで
青いレモンの果実を厚めの輪切りにしていくと
そよぎ光るレモンの香りがあたりに広がるのを見届けた
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