滲んだ絵画/凍月
その絵画は、
曰く付きだった
とある画家の
最後の傑作であった
まず、その絵のジャンルが分からない
人物画なのか肖像画なのか
風景画なのか何なのか
ただ、正確に言うと
それが何の絵なのかも分からないのだ
そこに絵があっても
それがどんな絵なのか
判別出来ないのだ
僕は気になって気になって
その画家の美術館を訪ねた
他の絵には目もくれず
ただ、その絵を求めて歩いた
ある部屋から
泣き声が聞こえてきた
何だろうと思い
そこに向かう
その部屋には
一枚の立派な額縁と
その中にある絵と
それを見て泣いている人々がいた
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