存在と無存在と実存在と(“存在”の本章として)/HAL
 
きみらが見ているものは仮想現実だ
ただ厄介なのはその仮想現実が
きみらの現実とぴたりと
寸分たがわず重なってしまうことだ

つまり仮想現実を何らかの方法で削除できるとして
すでに現実との密着性が強い仮想現実を削除した場合
同時にきみらの見ている否もっと正確にいうと
きみらもきみらの現実も共に削除されてしまうことだ

そのままにしておけばいいと想うかい
そうするときみらの見ている仮想現実は
他の誰かたちの見ている現実にぴたりと重ね合わさり浸潤し
もうひとつの誰かたちの現実に酷似した仮想現実が誕生する

それをどこかで食い止めないと
仮想現実とまた違う誰かたちの現実がも
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