痛みを伴い硝子は光る/進夜
 
綺麗な硝子細工
その美しさに見目奪われ
壊さぬようにそうっと触れる
薄い硝子が何枚も組まれ
シャラシャラと涼しく切ない音を紡ぐ

今度はそのあまりの美しさに
壊したいという衝動に駆られ
1枚のサラサラ揺れる硝子に
そっと親指と人差し指を滑り込ませ
カシャン という音と共に
儚い硝子細工を壊した

すると壊れた破片は
容赦なく僕の指先を切り刻み
赤黒い液体が
艶々と白く透明に光る
穢れなき光を汚して逝った


美しきモノを汚したという事実
それゆえ溢れ出る後悔
後悔後先たたず

自分の色で汚く染まった硝子
もう二度と清き光は放たれない


壊した代償

傷つけた代償

汚した代償


うっすらと赤黒い色を貼り付け
硝子は鈍い色を放つ


泣いてるような
恨んでいるような
苦しんでいるような・・・・


罪悪感を狩られている自分に気付き
指先の鉄分をそっと舐めとる

それでも過ちを犯さず生きることなんて
きっと僕にはできないのだろう
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