空白の館/アラガイs
 
に夢中になれるのだろう。とうとう混乱して出てこなかった。「わからない…答えを、教えください」「答えは「机」「時計」「鏡」です。」
瞬間わたしの中で時間が停止してしまった。どうやら単純で無垢なこの質問の意味作用は壊れた神経回路の修復には間に合わなかったようだった。
白い建物の外へ出る頃には来たときの自分がまだそこに居る。タクシーに乗り込むと学校帰りの子供たちの姿が路地から現れては消えた。
何を話し何を聞いたのかをすっかり忘れていた。実は何年の何月何曜日かなんてあれ以来考えたこともないのだ。見慣れた道路を曲がり街の形状をもう一度振り返れば、事実応対した医師と事務員たちの笑顔だけは鮮明に覚えている。







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