王国記 ?/木立 悟
 




はざまの多い森の端を
光の川が流れている
刃物の影が
水草にゆらめく


増えてゆくばかりの光の束を持ち
水にも土にも放れずに居る子
重さもなく熱もなく
ただ何も見えなくなる


洪水の痕のほうから
ずっと吼え声が聞こえている
生まれては消える泡の影が
無数の生きもののように水底に積もる


窓硝子に描かれた鳥の絵が
幾羽も幾羽もはばたいている
いつのまにか径には
午後が流れている


光が辿る先を
曇もまた辿る
祓いまたたき
頭上に何も描くことなく


径に面した扉をあけると
家々の入口はすべて鏡で
誰もいない午後を
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