朽ちてもいいんだ、この町は/遙洋
坑道は閉じられた
この町の盛衰などは
年表に改めて書きくだすまでもない
わたしたちは身を染めるように
幾百の眼で見てきたではないか
鉱石と蔓草と共同墓地
その合間のくらしのうつくしさ
いく年も
その中に身を尽くし
過ごしてきたではないか
もはや町とも呼べないひとつの集落において
産業は廃れても
精神は鉱夫の子としていきる
わたしたち
今日も明日もくちずさむ唄をもつ
わたしたちは
枯渇に放り出されても
こころは鉱山のままにいきる
老人をいたわることを忘れはしたが
血の中に爆破の衝撃がめぐりつづける
いつか硬いことばをうしなうだろうとも
唄は唄のままにいきる
そのような唄を受け継ぐ
わたしたちは
綴られることを望まない
時が拡散するように
山を越え海を越え
散らばってゆく
わたしたちは
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