こだわり/ただのみきや
掛け軸の中に残された想い
夜が十分に闇であった頃
月の柔肌に立ち昇る香の煙より
しろくあわく
現世を離れた囁きを運ぶ
ぬるい風を孕んだ柳のように
しなやかにたおやかに
像なき 悲しみ 無念を
目を瞑った子供の手の
無垢な たどたどしさで
だがやがて見ているかのよう
薄墨の絵筆が
すうーっ と なぞり
渦巻く怨念の中からそこはかとなく匂い立つ
死して尚 燐光の如く灯る情愛を
色なき色で描き上げた
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数百年の時を経て
絵師に似た
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