こだわり/ただのみきや
 
掛け軸の中に残された想い

夜が十分に闇であった頃
月の柔肌に立ち昇る香の煙より
        しろくあわく

現世を離れた囁きを運ぶ
ぬるい風を孕んだ柳のように
        しなやかにたおやかに

像なき 悲しみ 無念を
目を瞑った子供の手の
        無垢な たどたどしさで

だがやがて見ているかのよう
   薄墨の絵筆が 
        すうーっ と なぞり

渦巻く怨念の中からそこはかとなく匂い立つ
死して尚 燐光の如く灯る情愛を
        色なき色で描き上げた


  *****


数百年の時を経て 
絵師に似た
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