銀架を駆る/久野本 暁
正常に動く心拍が苦しい
穴だらけは星々の睥睨だ
脂汗も冷や汗も平等だと
穴だらけの地面は高貴だ
蒼天と真空のあいだから
繋がりのない銀架を踏む
どうしてこうなったのか
口内は苦みを増していく
一切の風除けのない周囲
膨大過ぎる抑圧の眼差し
清浄に向かう心拍はない
炎天と曇天の向こうから
鎌を持った広辞苑が来る
全ての言葉の意味を只々
ぶつけては足元を揺らす
もうどうしようもないな
正常を求める動悸の果て
支えられない銀架を駆る
傾き始めてしまえば最後
二度と戻る事の叶わない
届かぬ遠い輝きを見ては
発火する足元を忘れたい
ごめんなさいって祈って
仰いでそっと目を閉じた
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