ナニカ/草野大悟２
何で私に？」
「とにかく一度会って頂けませんか」
野津が電話口で逡巡しているのが分かった。長い沈黙があった。
「う〜ん、あんまり気は進まないけど、市役所近くの『龍庵』に午後六時でどうです？ 場所分かりますか？」
「ええ分かります。午後六時ですね。ありがとうございます」
約束の時間に『龍庵』に着いた田沼が、サタディ毎日の者、と告げると二階の個室に案内された。そこには、既に野津が待っていて、生ビールを飲んでいた。
「あー、あなたでしたか。先にやってましたよ」
「その節はご迷惑をおかけしました」
「迷惑なんていうもんじゃありませんよ。おかげで家庭は完全崩壊、俺は左遷だ」
その言葉
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