ナニカ/草野大悟2
た。見たこともない若い男が、幸恵を抱いて激しく腰を動かしていた。
足音を忍ばせて階段を降り、玄関のドアをそっと開けて外に出た。心臓がバクバクしていた。暗くなるまで家に帰れなかった。心配して探していた幸恵が、公園のブランコに乗ってぼんやりしている野津を見つけ、何も言わずに手を引いて家に連れて帰った。
野津は、この時から幸恵とはいっさい口をきけなくなった。やさしく声を掛けられる度にあの光景がよみがえってきた。秀一郎が帰る予定の日の早朝、幸恵はその若い男と一緒に家を出て、二度と戻ってはこなかった。
次の日、秀一郎は何を思ったのか野津を映画に連れて行った。
『大草原の小さな家』というアメリ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)