ナニカ/草野大悟2
 
一人で本読んでんの? 友だちいねぇんだ。俺達がなってやろうか? えっ、どうだ?」
「……」
「お前何読んでんの? ちょっと見せてみろ」
 男がにやにや笑いながら、理沙がテーブルの上に広げていた本を取ろうと右手を伸ばした瞬間、
「やめろ!」
 理沙が大声で叫び、男の右手の甲にフォークを突き立てた。フォークは右手を突き通した。男は悲鳴を上げ、左手でフォークの刺さった右手を庇いながら真っ青な顔をして学食から逃げていった。理沙は、何事もなかったかのようにコーヒーを飲み干すと、ゆっくりと学食から立ち去った。男が座っていた椅子の下には、血が飛び散っていた。一部始終を見ていた野津は、鳩尾(みぞおち)
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