ビンの中  −2005.1.20−/桐野ゆき
 
霙の降った日
あの人は死んだ

赤いふうせん 青いふうせん きいろのふうせん
海苔の入っていたビンにたくさん詰め込まれたそれらを
一つ手にとって
私にふくらましてくれたっけ

ビンの中に詰め込まれたふうせんは
おばあちゃんの思い出だった
ひとつ
ひとつ
子猫をなでるみたいにふくらまされたふうせん
居心地のいい場所

いつの間にか
ビンの中のふうせんは無くなっていて
おばあちゃんもいなくなっていた
そこにはただおばあちゃんのにおい


私は
いつになったら死というものに慣れることができるだろうか
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