硝子に映った駱駝/草野春心
 


  硝子に映った一頭の駱駝は
  あなたのまわりのどこにもいない
  オアシスには細かい霧の粒が浮かび
  かれの毛並みを気高く妖しくみせているが
  大きな二瘤(ふたこぶ)にかなしさだけを載せて
  光と光のかすかな隙間に かれは とぼとぼ引込んでしまう
  あなたのまわりのどこにもいないその駱駝を
  あなたはいつまでもさがしつづけている



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