夏の歌II_風景/藤原絵理子
夕立の後 虹がかかった 山に
川は澄んだまま 流れていた
やさしい人が暮らしていた 美しい村に
笹の葉はしゃらしゃらと 風に語っていた
肌に川の香りを残して
葉洩れ陽は丸く ころころと転がった
葡萄棚の下で 本のページをめくる手
柱時計がぼーんぼーんと 時を告げた
あの日たち…
あたしは 透明な時間を失った
やさしい人は 知らない間に 姿を消した
「きみはもっと 透きとおっていたよな」 と
懐かしく あの子が 話しかける
お下げ髪が揺れていた 遠ざかる夏の風景
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