不海知/ねなぎ
 

腐ったような
ぬめる苔と
乾いて
音を立てる
くらげや
海藻に
絡みついた
流木を
砂まみれに
晒して
ザラザラとしている

焼けた砂の
照り返しに
松林が
脂指して

あの町の眠るような海は
今も眠っているだろうか
誰も居ない
誰も
何も言わない
眠っているような
海の向こうに

あの日に
見ていた
夢は
どこかに行ってしまって
二度と
帰って来なかった

あの町の
眠るような
海を
丘を
風を
蝉の声を
思い出す度に
何だか
遣る瀬ない
気持ちに
なるのだが
だからと言って
何も
出来ない夏が
過ぎて
あの町の
何も無い
海を
見ないで
眠る
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