嫌われてもいい/殿岡秀秋
名前とこのからだを
引き受けたときから
ぼくは舞台の主役になった
科白は自分で決めているようで
多くの出演者に
気配りしながら
作りあげていく
嫌われたくなくて
意見を言わないと
背景の松の木になる
喧嘩するのではない
相手と向かいあって
古代の衣装をまとったように
優雅に語るのだ
言うだけいったら
引き下がろう
主役は引き際も大切だ
舞台裏には
妻がいるから
ともにお茶を飲む
休みもリズムを作るのに欠かせない
場を踏むことで
自分の形ができる
助け合う共演者を大切に
観客のほとんどいない
小さな舞台を作る
主役はいつもぼくなのだ
自分の出番のときは
肩の力をぬいて
演じよう
自分自身を
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