マジックの種は天国の片隅に/ホロウ・シカエルボク
路面の亀裂に染み込んだ今朝の雨が、死せる魂のように空へ帰る頃、街角にはありふれたゴスペルが流れ、側溝には破り捨てられた誰かの診断書、飲み干されたBOSSの缶コーヒー、高いヒールで足首を挫いたらしい若い娘が、誰も訪れない公園に続く石段の二段目に座ってスマートフォンで誰かと話している、下品なイエローのスーツ、タイトなミニのスカートの奥の黒い下着が丸見えになっていて、昼飯帰りらしい土木作業員が見苦しい顔をしてその前を何度も通り過ぎている、廃品回収車のスピーカーが何処か遠くの方でお馴染みのコピーを繰り返している、雲行きはまだ不確かだけれどとりあえずはもう雨が降ることはなさそうだ、もちろ
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