「許し難い夜」/宇野康平
 
夜は蒸し暑い。

室外機が鳴る街路。

黒いゴキブリが棲家を探していた。

通り過ぎる私に

「家はありませんか」と尋ねた。

私は通り過ぎた。

街は許し難い。

私は振り返る。

そこに何も無かった。
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