小屋/草野大悟2
 
ちに満たされていった。
これまでに随分見てきた、あの「前ぶれ」も全くなかった。
 この幸せは、タチワナがこの小屋にいる間はずっと続く、と何の疑いもなく信じていた。

しかし……僕の幸せは、突然断ち切られてしまった。
 タチワナたちの、この小屋最後の公演の日、彼らは、群れをなしてやって来た。
 その日は、土曜日で客も多く、立ち見も出るほどだった。その大勢の客の中に彼らは潜んでいた。まるで獲物を狙う黒い犬のように気配を消して。
 その日、三番目にステージに立ったタチワナが、五曲を踊り終え、六曲目のポラロイドにかかった。
 彼女が、微笑みを浮かべて陰部をポラで客に写させた瞬間、客
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