人形/凍月
 


赤子のような人形と
人形のような子供が
成長してゆくうちに
キレイなモノを受け入れなくなる
いつの間にやら狂ったおもちゃになっちゃった
この世界に悪意は無いさ
自然に、ただ自然に
無邪気に何も考えず
適当なおもちゃを振り回す
山奥の鬱蒼とした暗がりで
大声で叫んでも無駄な事
黒く深い海の底
叫びが声にすらならない世界
幾つかの泡が雪のように昇る
砂漠の砂が
一粒消えても変わらない
腕がもげた人形
ボタンの目がとれた人形
下半身が消えた人形
首が見つからない人形
記憶だけになった人形
忘れ去られた壊れたおもちゃ
さあ心理の極限にある
おもちゃ箱を開けようよ
首の無い人形
首の無い人形
人形人形人形人形人形
顔だけが別の箱に入ってた
振ってみると音がした
蓋を開けたら
銀色の底が僕を見た


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