寒い夏の情景/イナエ
 

使い古され粉々になって
珠や紙に閉じこめられて玩具になったか
それとも 
人間の生きる早さに取り残されて
中世を彷徨いているのか

立脚した幻想におぼれるむき出しの感性は
張り巡らした蜘蛛の糸に触れる者を破壊し
近寄る他人を焼き尽くす
脳に潜む神々に幽閉されていた好奇心が
結界を破り 氷柱の穂先を濡らし
光に満ちた庭を這い回って 
花に誘惑された風のとげと同化する

水に溶けた食欲が
植物の胎内を駆けめぐり
従順な獣の根茎を貪り飽食する

壁にはめ込まれたカタツムリの目を
一つひとつ繋ぎ合わせて
網を織る指に
増幅した欲望が張り付き
天上を刺し貫くとき
見開いた眼は
夏に潜む冬の風に乾燥していくのだ
 

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