荒野にて/山部 佳
 
「ウイグル帽は止めとけ」
砂漠の砂と陽に焼けた案内人は言った
空港の前の道路に立っていた兵士が
死んだ伯父の口調を思い出させる


「殺せ」
そう言われたんや
粗末ななりして、笊持った年寄りなんぞ
敵のスパイなんかやあらへん
わかっとったんや、みんな

わしら、赤紙一枚で来ただけやよって
難しいことはなんもわからん
命令に従わんかったら
おつむが真っ白けになるまで
殴られるだけや

戦争ゆうのはな
殺されるだけやあらへん
人殺しを強要されるんや
それも、戦闘やなしにな
あいつらにかかったら
怪しげな連中は、みな犯罪人や
鉄砲もなんも持ってへん
そん
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