想い出 / ゴム鞠毬は暗がりを跳ねて落ちて/beebee
 







あれは5月の終わり
小学生のぼくは
一人で仲間から離れ
体育館の横の鉄棒の側の
紅いダリアに見入っていた



転がり落ちるゴム鞠毬は
階段を跳ね
壁にぶつかり
非常階段を跳ね
壁にぶつかり
螺旋階段を下へ下へ
降りて行く



ゴム鞠毬のように
想い出は繰り返し
繰り返し途切れ
繋がって行く光り



紅いダリアの花の上には
黄緑色のバッタが止まり
僕を見上げていた
黄色い花粉に塗れ
花芯に顔を埋めていた



誰が落としたのか
その時ゴム鞠毬が
非常階段を跳ね
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