ひとつ 湛える/木立 悟
 





森のむこうの白い水
近づいても すぎても
動かない水


空を映した飾りにも
動かぬ光の視線があり
さらに遠い白を見つめる


輪の内に火の内に贖いは降り
繁栄と荒廃をくりかえし
虚の内の虚の内の焦土に響く


踏みしめられた床が
ゆうるりと元に戻りゆく
水に似た音をたてながら


砂と壁
偽の窓に映る
白と黒の筒の空


宝石の目 日没の目
鳥の姿の傷
降りそそぐ


蒼や青や藍のなか
虹の耳が耳にまるまり
過去の雨を聴いている


痛みが吹く
金が吹く
常に痛みが 残される


虚と器 虚と器
わたされるものなく わたされるもの
淡く儚く 未明のもの


金属の標が
石の通路に倒れ散らばり
すぎる空を湛えつづける






























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