約束/アンドリュウ
いうその日
偶然会った邦人の友達から信じられない言葉を聞いたのだ
「あっそうそう前島美智子ってお前の元カノだったよな?…
あいつ可哀そうに事故で死んだんだぜ」
「えっ!冗談だろ」
「まじだよ えっとあれは確か三年前だったかな
高速でトンネルの天井が落ちて来てさ…」
四郎は突然雷雨の中に引き立てられた様な衝撃に打たれた
自分がここまで頑張れたのも全て美智子の存在があってこそだった
セミの抜け殻のような体で帰国し茫然自失のまま無意識のうちにこの山に登って来た
ここが唯一美智子の存在を感じられる場所だった
静かに涙が溢れてくる
拭っても拭っても溢れてくる
本来なら今日が約束の日だった
二人で手に手を取って新しい人生を歩んで行ける輝かしい始まりの日になるはずだった
四郎は声をあげて号泣した
ミチコ〜なんで俺を残して行っちまったんだ
心のたけを言葉にならない嗚咽に繰り返した
ふいに人気のない山頂に一陣の風が吹いて
夕暮れの薄明かりの中を何かが草を揺らして登って来るのが見えた
血塗れの何かが…
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