ひとつ 降夜/木立 悟
 





花を照らす灯が消えて
風がひとしきり吹いたあと
花は土を
濡らすように照らし出す


幾何学の家
同心円の小さな灯り
地の風が雷雲を追い
やがて窓は静かになり
わずかな影をまたたかせる


夕暮れに臥す鏡
鼓動する林の隙間から
風が途切れ途切れに逃げてゆく
巨大な羽を冷やしきれずに


双つの白い径がかがやき
峰の銀河を消すほどまばゆい
夜は確かに在るはずなのに
音の軌跡ばかりが繰り返す


縛られていたものは放たれて
ほつれた行方を踏みしめる
足跡を目指し 冬は来て
刃先を刃先を刃先を歩む


応えながら
数千年
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