ひとつ 微塵/木立 悟
持ち上げた指が空に触れ
さらに向こうへ向こうへと触れ
指でなくなりながらなお
さらにさらに触れつづけている
空を貫く珊瑚礁から
裸足の音が降りそそぐ
風が風を打ち
かけらはかけらに
光は光に地を穿つ
同じけだものの居ぬほうへ
けだものは堕ち 増えてゆく
曇はちぎれ陽はちぎれ
影はちぎれ 原の浪は
暗く暗く 暗く明るい
指は消え 指は現われ
指は指でないようになり
それでも指は指のままに飛び
空が空でなくなる場所に
ひとつのしるしを置いてゆく
数兆の糸
秘花の板
弱々しい回廊
突き刺さる 突き刺さる
触
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