甘すぎないからいいんだよね/吉岡ペペロ
 


吸血鬼がぼくに笑いかけていた



ぼくは鳥肌をたてながら何か用かという目を吸血鬼に向けた

吸血鬼が立ち上がった

そしてぼくのうなじに顔を埋めてきた

香水の香りが口に入ってぼくはむせた

周りの客の視線がぼくと吸血鬼に集中している

甘すぎないからいいんだよね

さっきの会話ががやがやと思い出される

吸血鬼は吸い終えるとぼくにハンカチをよこした

そのビニールに入ったハンカチをあけて首にあてると

ぼくは羨望のまなざしを浴びながらレジへとまた向かった

最初からぼくを吸いに来ていたのだろう

あの大学生は吸血鬼保護センターの職員だ
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