パンディ・バンディと紳士/佐久間 肇
した
きっとあの時と同じ風だったと思います ―――
何かの拍子で、わたしは箱を手放してしまい
それはいよいよ、わたし自身の命に関わってきていたからかも知れません
そうです、わたしは結局のところ、
命を奪われそうになって箱を手放してしまったのです
紳士に咎められるよりも、真面目になって、わたしは
わたしは―――
鞄の中から現れたのは、紳士よりも一回り、いや二回り小さい
紳士でした、黒い衣服を着た小さな小さな、
小さな紳士はにこにこしながら言うのでした
「おねえちゃん、これは、とっても大事なビー玉なの」
「おねえちゃん、これを、みんなに返してあげて」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)