パンディ・バンディと紳士/佐久間 肇
 
望まれるかたちを知りながら、それを拒んだ
紳士は黒い衣服に身を包み、わたしを睨みつけた

 ――― 風が吹く ここには とっておきの ―――

髪が乱れる それと同じくらいに 心が乱れる
ミスマッチに自己主張をしてくる手元の鞄を見つめて
「お前もこの中にしまってしまおうか」と
脅迫でもない声で、迫り来る憂鬱を

キャスターつきのトランクになら、いくらかの自由が残っているのでしょうか
探知機に探されるほどでもない迷(まよ)い子の
誰かの鞄に滑り込んで、紳士の笑い声をやり過ごすため

 ――― 風は通り過ぎました 新しい地を求めて ―――

 メガネを落としました
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