扉の前のエロスに捧げるソネット?/Giton
ぼくは湖水の深い深い底に沈み
はしゃぐふたつの身体たちを下からじっと見つめているらしいのです
そしてとなりにも誰かいるのか?‥この不安をおさめるためにキスはしない‥
しかし不安をあおるためならば、むしろよろこんで‥
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2つのグラスは、気づけばすでにからになっていて
映っていたのは誰の顔だったか思い出せぬまま
新しいことはいいことだ、大海原に船を出せばきっとなにかいいことがある、と潮風を胸いっぱいにすいこみ
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なにかきっと恐ろしいことがある、なにがあろうとこの岸にさえ戻って来なければよいのだなどと嘯いて
口笛を吹いて船の上‥軽佻に歩みだす対岸の岸辺‥ともかくひとりではないらしく
壁を見上げれば裸体のエロス(注:ローマ神話でクピド(キューピット)."エロチック"等とは無関係です。念のため‥)、扉の縁には黒い線がやっとひとすじ浮いているのが見えて
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