転倒/いぬぐす
顔にある大きな穴を覗き込み背後の景色の美しさを観てうっとりとして
穴の背後に回ると 穴の前に立つ自分が見えて疑心暗鬼を生じていた
陽の光を遮光カーテンで遮ると部屋は蛍光灯の光に照らされてどこかぼんやりとしていた
自分の思い込みによる一般論で穴を覗くことを止めようとしてはくじけていた
会いたい アイタイ ア イタイ 痛い //会うと胸が痛いのは
愛している アイシテル ア イシテル 逸している //愛をすでに逸しているから
安心したくとも疑心暗鬼は消えない 信じたくても「あ」の不在は深刻だった
穴は日々足元に向かって転移していくので
いまや全身はネズミにかじられたチーズのよう
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