Atom Heart Mother/藤原絵理子
牛が草を食む音が 聞こえてくる
静かな午後の平和に 仔牛は乳房に寄り添う
サンエチエンヌの草原で 見渡している
あの日 旅する雲は東へ アルプスを越えて
熱に浮かされたような 隊列の行進は
祖国の大義と 神の祝福までも手にして
誇らしく 栄光に輝いて 涙を隠して
うねる金色の波に 勝利を信じて
町の鐘の音は 爆音に途絶えた
紡ぎ車の糸は 声を潜めて こと切れた
勝利の果てに 待っていたものは
帰らない恋人は 糸杉の並木道の彼方に
ひまわり畑の 地平線の彼方に
降り積もった 時の灰が 髪の色を変えた
戻る 編 削 Point(7)