宮殿で/藤原絵理子
未亡人は すすり泣いている
孤児は 不安な目で放心している
やわらかな雲の 灰色の朝
日が沈むまでの 茫漠とした一日
ネクタイを締めた賢者どもは
気の利いた冗談を交し合って 笑う
夕暮れには 赤い血のワインをひっかけて
夜のお楽しみ あやつり人形の踊り
「神に見放された」と 黒い天使の翼は
黒光りする 非情な金属の 薄い板に
変容する ただひとつ残った 希望
農婦の蒔いた 時間の種は 闇に干からびる
誤魔化しても いつかは ばれる嘘
ムーア人の撞いた鐘は ひび割れて落ちる
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